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菅直人元総理への見方が変わる本

光村図書の小学5年生の国語教科書の中に、『想像力のスイッチを入れよう』という説明文があります。「文章は想像力を働かせながら読まないとダメだよ」という主張を、小学生にも分かるように書いた説明文です。

 

筆者は下村健一さん。その方はなんと、菅直人元首相の側近?の1人として内閣広報室で働いていたそうです。そのときの経験を朝日新書首相官邸で働いて初めてわかったこと』に書いています。

 

我々国民は首相官邸の中で何が起こっているのか分かりません。総理大臣がどのような気持ちで仕事に臨んでいるのか。そして、なぜ情報が国民にまで降りてこないのか誰もが不思議に思っていることでしょう。本書はそうした、我々が知らないブラックボックスと化した首相官邸の内部を、極めて平易な言葉で書いている良書と言えます。

 

特筆すべきは、「3.11」の際の菅元首相の行動や様子を書いた部分でしょう。

 

今もなお、国民の中で「3.11」時の菅元首相の行動に疑問を持っている人は多いと思います。しかし、本書を読むと、菅元首相はかなり、最善を尽くそうとされているのが分かります。何といっても、原発の情報がなかなか首相のところにあがってこなかったという話は、同情さえしてしまいます。

 

余談ですが、本書では、筆者が原発関係者を強く批判しています。ただ、私は先日、ブログで紹介した本とも絡まり、「情報の軽視」や「事なかれ主義」が相変わらず日本の組織には残っているのだと感じました。

 

本書を読む一番のメリットは、菅元首相の見方が変わるということです。筆者の悪戦苦闘ぶりや首相官邸の内部の様子を知る良さももちろんあります。しかし、我々国民があまりに低評価を下した菅元首相も、見方を変えれば、そう悪い宰相ではなかったのだと気付くのです。

 

人を評価するのは簡単なようで、実はとてつもなく難しいのだ。評価するには多方面からの見方や考え方が必要である。自分はマスメディアの言うことや当時の雰囲気に流されて、菅直人という人物を評価していなかったか。

 

今年であの「3.11」から5年。当時の首相や内閣を再評価するにも、優れた1冊と言えるでしょう。

首相官邸で働いて初めてわかったこと