先日、大阪で開かれた「学力研・全国フォーラム2026」に参加してきました。
学力研とは、正式名称「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会」です。よく学校の印刷室にプリント集が置かれていますね。私もよく使います。この会は何といっても岸本裕史先生が有名。100ます計算を世に広められた先生です。
その会の全国大会が大阪で開かれ、しかも講演会として新井紀子先生をお招きする…とあって行ってきました。
新井紀子先生は『AI vs教科書が読めない子供たち』で一世を風靡した方です。最近は読解力を診断するリーディングスキルテストを開発したことでも知られます。
その講演会ですが、結論から言うと大変良かったです。そのエッセンスを紹介します。とはいえ、だいたいは書籍にも書かれていることなんですが。
・今、従来の日本式授業が成立しなくなってきた。
・その原因はテクノロジーや家庭の価値観の急激な変化である。
例えば「オール電化なので火を見ない・紙幣や硬貨を使わない・沸騰を見たことがない・宿題をさせたがらない親」など
・だからこそ「環境に負けないレジリアントな教育の確立」が大事(新井先生は「こういう言葉を使わないと…」と嘆いていた)
・RST(リーディングスキルテスト)を開発したが、これは従来の国語教育の読解力とは異なる。だから最近ではシン・読解力と呼んでいる。
・いろいろな問題例があるが…
例:ポルトガル人追放問題:正答率 中学生で半分(2択なのに)
素数問題:正答率 中学生で38% 教員でも55%
・RSTと全国学力学習状況調査」の相関係数はかなり高い。
・「RSTは低いのに、テストができる」→オーバーアチーバー。ドリルや暗記で点を取っているだけかもしれない。学年が上がり、読解力が不可欠になると学力が下がる可能性あり
・「RSTが高いのに、テストはできない」→アンダーアチーバー。家庭環境?教師との相性?他のことに興味関心がある?
・脳のワーキングメモリ(WM)にかかる負荷を認知負荷と言う。
・中でも課題外在性認知負荷(課題とは直接関係のない認知負荷)を下げたい。そのために何をすればいいのか?
・タブレットはむしろWMの負荷を大きくする。(例:突然シャットダウンした・文字がうまく打てない・変な画面が出た…などトラブル続き)
・学力テスト追跡調査の結果、2021年から2024年にかけて点数が下がった。その間に起こったことは「タブレットの導入」と「アクティブ・ラーニング」。新型コロナウイルスではない。(それなら2021年の段階で点数は下がっている)
・タブレットではなく、視写や音読、ページをさっと開くこと・計算の熟達など、トレーニングで負荷を下げることが大事
・なんとなく言葉を知っている子に、曖昧な言葉を使わせ、それを根拠にして授業をしてはいけない。教科書に書かれた正しい定義のもとで、授業を展開すること。
・指差し確認を3秒で全員が完了させたい。
・まずは型。すると型を破りたくなる。
・具体的な授業の仕方はRSノート初級編を参考に(ネット検索すると出てくる)。
(検索すると、やり方が書かれていた。黙読→音読→聴読→視写→校閲という流れ)
講演内容は以上。以下、感想。
・新井先生の本は何冊か読んでいたが、講演会は初めて。アンチ・タブレットなところが自分と似ていてとてもよかった。
・講演会自体はとてもよかったのだが、70分の予定時間を結構オーバー。これは主催者側がもっと長い尺を取っておくべきことだったと思う。新井先生目当ての人も多いだろうから、せめて講演会では90分は欲しい。質疑応答の時間もほしかった。
・新井先生の書籍を読んでも毎回思うのだが、RSTと全国学力学習状況調査の相関関係が高いのは分かるが、視写や音読などがRSTを高める理由がよくわからない。新井先生は「課題外在性負荷を下げるため」と仰るのだが、視写や音読などのトレーニングで、RSTのアミラーゼ構文や素数問題が解けるようになるとは直感的に理解しがたい。RSTとトレーニングのつながりを、もう少し丁寧に説明してほしいところ。
学力研についても感想。
・年々、参加者が少なくなってきているらしい。確かに登壇する先生たちの年齢層も高め。どの民間教育団体も高齢化が進んでいる印象を受ける。
・学力研の目指すところは、今の指導要領や文科省の流れとは一線を画す。だからこそ価値があるし、公立の先生には魅力的な団体ではないか。でもアピールが少し弱いイメージ。もっとSNSの発信や学校への案内をしたら?と思う。
・1日で4000円はやや高め。同日、文芸研が大阪(枚方市)で全国大会を開催していたが、文芸研は2日間で4000円だった。
・自分が参加した分科会の参加者は10名ほど。内容は割愛するが、もう少し工夫が必要かなと思った。分科会だけなら、次は参加しない見込み。あとは講演者次第。他の団体が呼ばないような方を呼んでほしい。
・学力研の良さ…がもっと伝わるといいなと思う。学力研基礎講座…的なものがあれば参加したい。1年生講座はオンラインでよくやっていて、そちらはかなり良かった。
・実践発表の岡本先生は、相当力がある方な印象。その良さをもっと分析する時間があればいいなと感じた。今回は新井先生の前座…のようになってしまっていてもったいなかった。
・学年に分かれての分科会だったが、教科ごとの分科会という手もあるのだろうなと思う。
・とはいえ、暑い中大きなトラブルなく運営してくださった関係者の皆様には深く感謝と敬意を申し上げたいです。大阪まで行って良かったなと思う研修会でした。