小学校教師クラメロンの日常

関西のみかんが有名な県に住んでいます。小学校教員。3.5.2.6.5異動1.4.特別支援学級.5.1という流れ。今年も生徒指導主任。

子供の発言力を鍛える

先日、校内の中心授業をしました。教科は国語。「たぬきの糸車」という物語文を授業しました。

 

様々な問題点が浮かびましたが、その中の1つの「子供たちの発言力が低い」ことが気になりました。

 

発言力とは何でしょうか?

 

大きく技術面と心情面に分かれると思います。

 

技術面の方が分かりやすいでしょう。

声の大きさ、抑揚、スピード、結論から話す、ナンバリング、友達の目を見ながら話す等々。

教師ならば誰でも一度は子供たちに指導したことがあるでしょう。

 

こういったことももちろん気になったのですが、それ以上に心に刺さったのは心情面です。言い換えれば、子供たちの「発表したい!」という意欲のなさです。

 

もちろんそうしたのは授業者である自分の責任です。

 

では、どうすれば子供たちは「発表したい!」と思うのでしょうか?逆に言うと、子供たちはなぜ「発表したくない。」と思っているのでしょうか?

 

子供たちが発表をしないのは、「発表をしたくない」からではないのかもしれません。

 

例えば次のような理由が考えられます。

・話の流れが分からない。
・話の内容に興味がない。
・それまでの話を聞いていない。
・一問一答のような簡単な問いには手を挙げるが、説明を求められると困ってしまう。
○どうやって答えたらよいのか分からない。
○きっと誰かが答えてくれる。

 

直感ですが、上の○の箇所は結構いい線をついているような気がします。

 

自分もそうですが、多くの教師は中心発問には気をつけます。ですから、中心発問に対しては結構子供たちは答えられるものなのです。「この場面の主人公の気持ちは?」と聞かれたら、それなりに述べるでしょう。しかし、その後に教師が問い返すときには、いきなり挙手率が下がります。代わりに手遊び率が高まります・・・。

 

つまり、「どうやって答えたらよいのか分からない。」と「話の内容が分からない。」「きっと誰かが答えてくれる。」の合わせ技で、子供の発表意欲は削がれているのではないかというのが私の仮説です。

 

私の授業の挙手率が特に下がるのが授業の後半であることも、上記の仮説を裏付けます(結構どのクラスを見てもそんな印象を受けますが)。

 

ではどうすればいいのでしょうか?

 

普段の鍛えと授業における工夫という、2つの観点で解決を図るのが良いと思います。

 

普段の鍛えとは何か。

1つは発言耐性をつけることです。普段から授業中にペアで話したり、全員が1回ずつ発言するようなごく簡単なスピーチ活動を組んだりするのです。スピーチ内容は些細な内容でいいと思います。好きな果物や得意な教科などを理由をつけて話させるのです。一人あたり数秒で終わることを毎日全員に取り組ませます。するとだんだんと発言そのものへの耐性がつくでしょう。

 

子供たちの中には、手を挙げるという行為そのものに慣れていない子もいます。ですので、手を挙げる練習も必要かもしれません。「今日、朝パンを食べてきた人?」のような何気ない問いかけに、きちんと手を挙げているかどうかを見てみてはどうでしょうか。曲がっている子供がいたら、「腕は曲げるのではなく伸ばすのです。」などと声を掛けます。

 

では、授業における工夫とは何か。

 

私に欠けていたのは、こちらだと思います。

 

まずは授業中盤以降の発問をもう少し簡単にすることです。

 

問い返しの発問は本質的なものが多い反面、勉強ができる子が活躍しやすい場合がほとんどのように思います。例えば以前、「お手紙」(アーノルドローベル)で次のような授業を見たことがあります。

 

中心発問は「かえるくんはなぜ、手紙の内容をがまくんにばらしてしまったのかな。」でした。

 

子供たちは答えます。
・がまくんに伝えたかったから。
・手紙を待っていられなかったから。
・がまくんを早く喜ばせたかったから。
・かえるくんは待ちきれなかったから。

 

どの意見からも、かえるくんの優しさが分かります。

 

その先生は次のように問い返しました。

 

「じゃあ、かえるくんはかたつむりくんに渡さないで、トンボやチーターに渡した方が良かったんじゃない?」

 

「それじゃだめだよ!」

と答えた子供は意外と少数でした。

 

先生の問い返しは悪くないと思いました。遅い者の代表例であるかたつむりくん。彼に頼んだかえるくんのユーモアに気づかせる促しです。しかし子供たちにとって、その問いは想定外で、極めて高度でした。

 

問い返しの発問は授業の中盤以降を盛り上げたり、目標により一層近づけたりする効果があるものです。しかし、それまでの授業の流れを途切れさせる場合があります。そのため子供たちの挙手率が一気に下がり、優等生しか答えられない「ちーん」とした授業になってしまいます。

 

だからこそ、授業のおける工夫が必要になります。

 

学力的に低位で、話の流れや友達の話、教師の問いかけを十分に理解できない子供でも分かるような、それでいて面白い問いを考えるのです。

 

「そんなこと無理だよ!」

 

私も無理です。そのためにまず授業中盤以降の問い返しを、より具体的かつ明確にするようにしています。例えば先ほどの例で言えば、


「かたつむりくんは遅いよね。トンボやチーターだったらどのくらいで手紙がつきそうかな? あっという間だよね。でもかえるくんは、かたつむりくんに頼んだ。じゃあ、手紙がゆっくりと届くまでの間、どんな良いことがあるのかな?」

 

これならば、低位の子供でも先ほどの問いよりかは多少なりとも答えられるのではないでしょうか。

 

私は問い返しの発問がだめと言うつもりはありません。むしろ非常に有効でしょう。しかしもっともっとクリアなものにしなければ、発言力の心情面の問題は解決されないのだと思います。