子供が言うことを聞かず、学級が崩壊する。そんな姿を数多く見てきました。自分も経験しました。
その原因は様々ですが、ひとつに「圧をかけなかったこと」があると思います。
「圧をかける」とは、例えば宿題を出さない子供がいたときに「なぜ出さないの?」と問い掛けたり、「休み時間に宿題をやりましょう」と促したりすることです。簡単に言えば、「圧をかける」とは、子供の不備不足を見逃さず、子供の変容を促すことです。
「圧をかける」には段階があります。先ほどの宿題の例で言えば、宿題を出さない子に対して、何も言わないのは「圧をかけない」と言えます。段階を1つ上げると、「なぜ出さないの?」と子供に声を掛けます。さらに段階を上げると、「明日、出してね」と言って、出したかどうかを翌日確認することがあるでしょう。ここぐらいまでは多くの先生方がされているでしょう。もっと段階を上げると、「休み時間にやりなさい」になったり、「宿題を終わってから給食を食べなさい」となったりします。場合によっては、「最近、○○さんが宿題を出していません」と保護者に連絡をします。
ただ、宿題については、最近、あまり厳しく言わない学校が増えてきました。そもそも私の学年では宿題を完全な自主学習と位置づけ、提出を求めないところもあります。
他の例を挙げてみます。
音読です。
国語の時間に、小学校であれば、どの学級でも音読をするでしょう。その声はどうでしょうか?
何も指導をしないと、たとえ低学年であっても、ぼそぼそ声になります。そこを見逃さず、指導を入れるかどうか。
「圧」のかけ方は様々です。「もっと背筋を伸ばして」や「みんな、声が出ていないよ」と発破をかける場合もあるでしょう。班ごとに音読をさせて競わせることもあるかもしれません。あるいは、きちんと声を出せている子やグループを褒める場合もあります。褒める場合は、あまり「圧をかける」感じがしないかもしれませんが、子供の変容を促すという点では同じですね。
このような「圧をかける」指導をどの程度行うかどうか。それは教師によっても違いますし、経験年数や子供の実態、もっと言えば、時代によっても変わります。
圧をかけない教師のもとでは、子供は怠けます。当たり前ですね。すべて見逃されれば、安きに流れるのが子供です。その結果、学級崩壊が起こります。若い先生に多いパターンです。私もそうでした。
圧をとにかくがんがんかける先生はどうでしょうか。子供からは嫌われることが多いです。高学年は特に難しいですね。褒めるのならいいじゃないかと言う人がいますが、高学年ともなると「あの子は褒められたいからやっているだけ」や「あまり目立つと名指しで褒められてしまうから嫌だ」など、子供の心境は一人一人複雑になります。褒めることもリスクになるのです。
最近は「圧をかける」ことを時代が求めなくなってきていると思います。「圧をかける」、すなわち子供を正しい方向に変化させる…教師の仕事の基本じゃないか!と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし今は厳しい指導ができない時代です。むしろ「本人の思い」を何よりも尊重する世の中ですので、「圧をかける」ことは難しくなっています。場合によっては、保護者から「宿題が大変だから減らしてください(逆もある。増やしてほしいという意見)」や「本人がよりよく理解するために音読をするのですよね。だったら大きな声で音読することを子供に求めないでください。声の大きさに意味はありません」などの意見が出てくる時代です。
周りを見ていて思うのは、「圧のかけ方がうまい先生は、学級がうまくいく」ということです。当たり前かもしれませんが、言う易き、行うは難しです。圧をかけること自体が、最近は難しくなっている中、子供の状態を見ながら、適切に圧をかけていくのは本当に大変です。
それならば圧をかけるのをやめようという考え方も、私はよく分かります(実際、自分は最近、圧をかけることをやめました)。
ですが、圧をかけなさすぎると、学級が崩れていくので、ここだけは譲れないというラインを作り、あの手この手で圧をかけていきます。
全体に対して、毎日家で勉強に取り組むことのメリットを伝えたり、イチローの言葉を紹介してやる気にさせたり、個別に子供を呼んで自宅に帰ってからの流れを確認したりします。もちろん、こんな細かい指導をするよりも、全体に対して宿題をやってくるように一喝する方がはるかに簡単です。しかしそれは時代が許さなくなってきています。もしも一喝することで、あの子が明日、学校に来ることを渋ったら…と考えるようになってきている時代です。手間はかかりますが、細かい指導をしていく他ないのです。
「圧をかけるけれど、フォローがうまい」という先生もいらっしゃいます。一昔前のように、子供を鍛えようという考え方をもちつつも、後で厳しい指導をした子供を呼んで「あなたには期待をしているから厳しく言ったのよ。ごめんね」と声を掛けている先生を見たことがあります。すごいなあと思ったものです。
あなたの圧のかけ方はどうですか?