小学校教師クラメロンの日常

関西のみかんが有名な県に住んでいます。小学校教員。3.5.2.6.5異動1.4.特別支援学級.5.1という流れ。今年も生徒指導主任。

春休みの今だから読みたい!大学生・初任者・若手教師に読んでほしい教育書10選(授業編)

 前回は学級経営編( https://humor1128.hatenablog.com/entry/2020/03/17/195414)でした。

 

今回は授業編です。

 

授業編の10冊を選ぶ方がずっと難しく感じました。できるだけ様々な教科に応用できる本がいいと思ったからです。そうすると、例えば国語の指導法の本…などは外す必要が出てきます。私が推したい本はそういった教科について書いた本が多かったのです。

 

小学校の低・中・高学年、そして中学校、果ては高校に至るまで、通用しそうな本を選びました。どの本も、読めば明日からの授業は激変します。ぜひ読んでみてください!!

 

①授業の腕をあげる法則(向山洋一)(新版は「上げる」)

新版 授業の腕を上げる法則 (学芸みらい教育新書 1)
 

もしも初任の先生に「どんな本を読めばいいですか?」と聞かれたら、迷わずこの本を挙げます。

 

いくつかの章に分かれていますが、特筆すべきは第一章の「授業の原則」。ここに書かれている10の授業の原則はどれも教師ならば覚え、上手に使いこなさなければいけないものばかりです。

 

趣意説明、一時一事、簡明、全員、所時物(持ではない)、細分化、空白禁止、確認、個別評定、激励…の10個です。

 

例えば、第一条の「趣意説明の原則」。

 

「ごみを拾いなさい」という指示はアマチュアなのだと氏は言います。

「教室をきれいにします。ごみを拾いなさい」と趣意(意味)を説明して指示をして、黒帯なのだと。そりゃそうですよね。指示だけ与えて以上終了、なのはロボットです。

 

さらに上級の指示の出し方もありますが、それはぜひ読んでみてのお楽しみ。

 

私はかつて、少し年上の先輩から「この10個の原則を来週までに覚えてきてね」と言われ、必死に覚えました。今振り返ると、10個の原則を覚えたこと、常に口に出せるようになったことは、非常に良かったと強く思います。

 

大げさではなく、この本を読めば、翌日からの授業が変わるはずです。

 

②授業つくり上達法(大西忠治)

Amazonを見たら、思ったよりもレビュー数が少なく、しかも酷評までありました笑)

 

「四分六の構え」と聞いて、「ああ、あのことね」と思う方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

 

板書のとき、多くの先生方は黒板に向き合っています。大西先生はそれはどうなのですか?と問題提起をされています。大西先生は言います。

 

「私は黒板に向かうとき、完全に黒板にからだを向けきってしまわず四分だけ黒板に、そして六分は子どもの方へ体を開くようにつとめるのである。つまりからだを斜めにして板書するのである」

 

その上で「背中で子どもを見られるようになればベテラン」とも言っています。この本には他にも「間」「声」「視線」「机間巡視」など、基本中の基本について書かれています。

 

ちなみに「四分六」は2種類あります。どちらもできますか? 偉そうに言う私も片方の仕方にはいまだに慣れません…。

 

③「つまらない普通の授業に子どもを無理やり乗せてしまう方法」(中村健一)

 中村先生は本当に面白い方で、私はセミナーでも本でもいつも笑いっぱなしになってしまいます。中村先生の凄いところは、昨今、売れている「策略ブラックシリーズ」もそうですが、普段、口にしたくても言えないことをズバッと言ってくれるところです。この本のタイトルも凄い。「つまらない普通の授業」ですからね笑

 

中村先生の主張は次の一言に凝縮されると思います。

 

「子どもたちを動かしながら授業をする」

 

子供に声を出させたり、どんどん立たせたり、挙手をさせたり、書かせたりするというものです。例えば「全員起立。○○と10回言ったら座りなさい」「見つけたら指をさして立つ」「素晴らしい意見を言った○○君に拍手~!」などの指示は、いつでもどの教科でも使えますね。

 

極めつけは次の一言。

 

「子どもたちにとって、授業は基本的につまらないものだ」

 

中村先生は極めてリアリストなのだと思います。思想に酔うのではなく、地に足をつけた、真の実践家なのだと思い、心より尊敬します。

 

④一斉授業10の原則・100の原理(堀裕嗣)

一斉授業10の原理・100の原則―授業力向上のための110のメソッド

一斉授業10の原理・100の原則―授業力向上のための110のメソッド

  • 作者:堀 裕嗣
  • 発売日: 2012/10/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

のっけから衝撃的でした。

 

「ゴールイメージの原理」

 

普通、春休みに先生方がされる教材研究は、4月の第一単元ではないでしょうか。しかし氏は「これが間違っている」と喝破します。ではどの教材から研究するのか。「年度の最後の教材」です。つまり、その1年間を終えるとき、最後の教材でどんな授業ができたら満足なのかを具体的にイメージするのです。そこから逆算して、第一教材の研究に臨めというわけです。

 

頭をかち割られたような衝撃を受けたことを覚えています。「逆向き設計」というわけです。

 

 前回のブログにも堀先生の本は載せましたが、ドッグイヤーを付けた量ならば、私の場合、こちらの方が圧倒的に多かったです。

 

(堀先生の本も外れがありません。堀先生の本で一番推したいのは『絶対評価の国語科テスト対策 20の提案』でしたが、こちらは残念ながらAmazonでは取り扱っていませんでした。見かけたらこちらもぜひ御一読されることをおすすめします。)

 

⑤授業で鍛える(野口芳宏)

名著復刻 授業で鍛える

名著復刻 授業で鍛える

  • 作者:野口 芳宏
  • 発売日: 2015/07/10
  • メディア: 単行本
 

 授業の名人と言えば、野口先生か次に紹介する有田和正先生でしょう。

 

野口先生は授業の本質を「学力の形成」とおっしゃいます。では野口の先生の授業とはどんな授業なのか。

 

それは子供の不備・不足・不満を指摘し、教え、鍛え、「向上的変容」を自覚させるものです。

 

例えば、野口先生は「この問題が解けそうもないと思う人は?」と分からないことを自覚させます。その上で、「これから分かるようになる。楽しみにしておいできましょう」と告げるのです。そして野口先生は教えるべきことをどんどん、どんどん教えていくのです。昨今、言われる「教えない授業」に真っ向から対立しますね。まさに「授業で鍛える」のです。

 

しかし、硬派な主張の裏には、細やかな授業技術があります。例えば、「なるほどなあと思ったら〇を書け。少しおかしいぞと思ったら×を書け」と小刻みにノートに書かせたり、「言いながら指を折れ。聞きながら指を折れ」と具体的に指示したりします。また、「発言はずばりと一言でせよ」と子供たちにおっしゃいます。これらは全て、今よりも少しでも子供たちが成長するようにという願いの表れです。

 

どれだけ時代が移ろうと、常に「根本・本質・原点」を大切にされる野口先生の授業は、派手さこそなくとも、確実に子供を伸ばします。

 

上記でも分かるように、野口先生には名言が多く、私は野口先生の言葉の日めくりカレンダーをリビングに置いているほどです笑 さくら社で買えるはずです。

 

⑥有田和正の授業力アップ入門(有田和正)

私が初任者のころ、授業を参観してくださった研究主任の先生がおっしゃいました。

 

「授業はねえ、スイカなんだよ」

 

は?何言っているんだ?と思った記憶があります笑

 

「スイカはどこから食べる?真ん中からだろう。そこが一番おいしい。授業も同じだよ。今日の授業は端からスイカを食べてしまったねえ。まあ、これを言ったのは有田和正先生なんだけどね」

 

そこで初めて、「なるほど!」と思いました笑

 

さて、有田和正先生と言えば、何といってもバスの運転手の発問が有名ですね。

 

「バスの運転手はどんな工夫をしているでしょう」という発問では、子供は動けません。しかし「バスの運転手は、どこを見て運転しているでしょう?」と問う。これは全員が手を挙げることができますね。

 

しかし有田先生の凄さは、発問の鋭さではなく、むしろ常にアンテナを張り巡らせ、ネタを探し続けてきた熱量だと思います。タクシーに乗るたびに運転手に話しかけてその土地のことを聞き、新幹線のグリーン車に乗れば置いてある(らしい)雑誌を持って帰る。有田先生御自身が「追究の鬼」だったわけです。

 

そんな有田先生ですが、ありがたいことをおっしゃっています。「ホームランをねらわずに、内野安打のような小さなヒットを積み重ねていくことだ」と。

 

まあ、それはそれでイチローを目指すことになるから難しいよなーと私は思うのですが。

 

⑦山本良和の算数授業 上学年の算数授業経営(山本良和)

 なんだ、算数の本ではないかと思われますが、ちょっと待ってください。こちらの本はたしかに算数の本ではありますが、他教科にも相当つながる部分を持っています。

 

筑波大附属小の算数部で長く勤められている山本先生。授業を見るたびに、バッハの音楽のように緻密な授業だなと感銘を受けます。こちらはその秘密の一端を分かりやすく学ぶことができる本です。

 

例えば山本先生は算数の授業開き1週間で、必ず全員の子供に話をさせるそうです。そのために「全員の子供に毎時間5回は喋らせるということを教師自身にノルマとして」課されているそうです。凄いですよね。(しかも今は10回にされているそうです)

 

具体的にどうするのか。例えば、授業で大事な発言を誰かがしたら「もう一度言える人?」と全体に聞きます。そのとき、特定の一人に言わせるのではなく、全員に言わせるのです。

 

山本先生も書かれていますが、これはどきどきしますね。友達と同じか、違うのではないか。実際に友達とずれてしまったら…。聞いていなかった日にはもうどきどき、どきどきでしょう笑

 

山本先生は聞くことを大切にされていますが、聞くことは聞いたことを再生して終わりではないとおっしゃいます。「再生することはあくまで話を聞くことのスタートに過ぎない」、「聞くという行為によって新たに情報を得るということは、話し手の意図が解釈できて成り立つ」と。首肯します。

 

山本先生はかつて、若い時、授業ノートを作り、毎日うまくいかなかったことだけを書き続けていらっしゃったそうです。そのことを酒席で聞いたとき、緻密な授業の裏には膨大な努力の蓄積があると知りました。

 

⑧子どもが授業の集中する魔法のワザ!(杉渕鐵良)

子どもが授業に集中する魔法のワザ!

子どもが授業に集中する魔法のワザ!

  • 作者:杉渕鐵良
  • 発売日: 2011/03/11
  • メディア: 単行本
 

 杉渕先生のセミナーに行ったとき、その授業映像に驚愕したことを覚えています。凄まじいスピードで掛け算九九を解く2年生の姿。しかも次の映像では割り算を解いている…。

 

杉渕先生は「ユニット授業」を提案されています。授業は普通45分間です。例えば国語の授業で、物語文を扱っているとき、45分間目いっぱい物語文の学習に費やしてはいないでしょうか。杉渕先生はそのように45分間を使うのではなく、時間を細分化して様々な活動に取り組ませてはどうかと提案されています。

 

例えば国語ならば「音読」「漢字の読み」「漢字テスト」「話し合い」などです。それぞれの分けたパーツをユニットと呼び、ユニットで授業を構成するから「ユニット授業」というわけです。

 

この授業スタイルをやってみて感じた良さは、スピードがついて集中力が上がること、どんどん行うせいか意外と遅れてくる子が目だないこと、何より子供たちが飽きないことが挙げられます。最近の子供たちはテレビ、ゲーム、動画などで短い時間で切り替わる活動に慣れています。私はゆるやかに行う授業よりも、テンポよく進めるスタイルの方が今の子供たちには合っていると思います。

 

もちろん考え方は人それぞれ。ですが、杉渕先生の提唱されているスタイルを知っておくことは、子供たちの「飽き」や「だれ」を脱却できるヒントになるはずです。

 

ちなみに杉渕先生の御実践の中で一番のお気に入りは「なんのこれ式」。毎年、学年団の先生方に必ず薦めています。詳しくは本書で。(さらにちなみに。杉渕先生の本でNO1だと思うのは『授業づくり・学級づくりのコツ(ネットワーク双書)』。新学習指導要領で話題の見方・考え方を1994年段階で授業に取り入れられていることが分かります。先見の明の鋭さ…。ただ入手がやや難しいかもしれないと思ったので10選には入れませんでした。)

 

⑨小・中学校でできる「合理的配慮」のための授業アイデア集(田中裕一監修 全国特別支援学級設置学校長協会編著)

 特別支援教育にまつわる本も入れなければと思っています。今や通常学級の経営にも特別支援教育の知識は不可欠です。とりわけ「合理的配慮」という言葉が人口に膾炙するようになり、何年もたちました。

 

しかし、特別支援教育の知識、例えば発達障害のことは知っていても、具体的に授業で、それも通常学級でどう生かせばいいのかは、意外と知られていないと感じます。

 

こちらの本は、学習や生活に困難さを覚える子供たちにどう指導・支援していけばいいのかを「写真付き」で書いてあります。「写真付き」なのがいいです。特別支援教育の本はやたらに難しく、字が多くて、何も特別支援教育の知見が生かされていない笑

 

ぺらぺらとめくるだけで学びは多いはず。

 

それでもさすがなのは、例えば「読むこと」に困難さのある子供のための指導のページ。

 

普通、スリットという用具を紹介しておしまい!なところを、色分けする方法、文節ごとに区切る方法など、いくつも書かれているのです。1つの困り感に対して、いくつも手立てが書かれている本は意外と少ないと思います。

 

特別支援学級ではそんなの常識じゃん!と思えるようなことが、実は通常学級では取り入れられていないことはよくあります。やってみると結構、効果的だということも。

 

 

⑩教育研究 2018年10月 第1400号 特集「私のつくりたい授業」(初等教育研究会)

http://www.elementary-s.tsukuba.ac.jp/research/magazine/

 

こちらの本には筑波大附属小の全先生方がどんな授業をつくりたいのかが書かれています。お一人お一人の哲学を垣間見ることができる本です。

 

この本は手に入りにくい(Amazonではなし)ということで、10選に入れるべきではないと思いました。しかしそれでもなお、こちらを推したいのは、結局、「あなたはどんな授業を目指すのか」が大事なのだということを伝えたいからです。

 

私たちは、筑波の先生が言っているから、有名な先生が書いているからなどと逃げるのではなく、「自分はどんな授業をしたいのか?」と常に自分自身に問いかけるべきだと思います。つまりこの本を10選に入れたのは、「読んでほしい」のではなく、「考えてほしい」という意図を込めたかったからです。

 

何より、このブログを書いている私自身に向けて自戒の意を込めています。

 

春休み。時間があります。自分はどんな子供に育てたいのか。どんな教師になりたいのか。そして、「どんな授業をつくりたいのか」。

 

原点を考えるための一冊です。

 

(なお、バックナンバーはAmazonの取り扱いはありませんが、筑波大附属小の公開研に行くと買えます)

 

・・・

 

今回も偉そうに書きました。すみません。

このブログを書くにあたり、読み返してみましたが、どの本も名著ですね。アウトプットをするからインプットの効果が高まります。いい勉強になりました!!  皆さんのおすすめの本があれば、ぜひ教えてください。