愛着障害とは何か。
昨日、こども発達支援研究会という団体による研修会(zoom)に参加しました。上記はその際のテーマのひとつです。
講師の前田智行先生のお話は非常に分かりやすく、かつ穏やかな話しぶりで安心して受講することができました。研修会では愛着形成の基礎を学び、大変勉強になったので感想を書きます。
私のクラス(特別支援学級)にも愛着障害ではないかと思われる子供がいます。ネグレクトで児童相談所が絡んでいます。運動会では集団の中に参加できなかったり、兄弟の万引き行為に引きずられてしまったりしています。
その子のことを思い浮かべながら話を聞いていました。
前田先生のお話の中でとりわけ印象に残ったことは「愛着形成の3ステップ」です。
1安全基地の形成
2探求基地の形成
3安全基地の拡大
そしてこの中の1番、安全基地の形成は親でなくてもいいのです。このことは杉山登志郎先生の『子育てで一番大切なこと』(講談社現代新書)の中にも書かれていました。
さらに一歩突っ込み、講師の前田先生は明確におっしゃっていました。
「先生が母親の役割をしたほうが改善されることがある」
これ、結構、今年度迷ったことの1つだったんです。
支援学級(個別学級)といえど、一人一人の自立を目指す場です。1年生ならばまだしも、先に挙げた子供はすでに4年生。休み時間に担任の体にしがみつく様はさすがにどうなのだろうと思っていました。「先生はお母さんじゃないよ」という気持ちにも正直なりました。
前田先生のお話をもっと早く聞いておけば、もう少し自信をもって、その子を受け止められたかなと思います。
ただ、それでもこういった愛着形成を学校が行うということは、特別支援学級ではできても、通常学級では難しいと思います。実際、前田先生も「愛着基地になるためには信頼関係のある先生が一対一で実施するのが基本」とおっしゃっていました。30人もいる通常学級で愛着形成に問題を抱えている子供をどうするかは、これからの課題でもありましょう。
とはいえ、知ることは重荷にはなりません。むしろ「知は力なり」です。自閉症スペクトラムや注意欠如多動症、限局性学習障害など、いわゆる発達障害のことに注目がいきがちの特別支援教育ですが、愛着障害についてももっと学ばなければと思いました。
さらにもうひとつ。
愛着障害児童への対応のポイントが極めて明快だったことも大きな学びでした。
「主導権は手放さない」
つまりは先手を打っていくということ。休み時間になるたびに、「外へ一緒に遊びに行こう!」というように。後手後手の対応だけはだめですと前田先生はおっしゃっていました。(定型発達の児童への対応にも言えますが)
このことは平岩幹男先生もおっしゃっていますね。
「自己決定権は与えても、主導権は渡さない」。
今年度、なかなかにわがままな子がいて、「勉強したくないー」という子に対し、「そっか、じゃあ1pやる?半分までならやる?」という対応をしたとき、「まあ、半分なら…」と、結構うまくいったことを思い出します。特別支援教育の世界では常識なのでしょう。
しかしこれは一般の教師の世界ではあまり知られていない考え方です。結構、簡単に主導権を子供に渡してしまっている若い先生は多いように思います。
今年度、特別支援学級の担任をして、ABAやTEACCHなど、通常学級でももっと取り入れればいいのにと思えるような特別支援教育の取り組みにたくさん出合いました。
特別支援教育の世界は、通常学級の教師の困り感を打ち破る宝庫なのかもしれません。
他にも
・探求基地になる方法
・遊びの発達ピラミッド
・安全感を育てる支援策
・安全基地のないことによる不適応行動
などなど、基礎的な知識から、具体的な対応まで、実に幅広く学ぶことができました。
講師の前田先生は研修会が終わった後も、丁寧に個別の質問に答えてくださいました。特別支援教育に携わる方は優しい方が多くて、勉強に前向きになれますね。心理的安全が保障された世界なのだと思います。
これだけ良質で価値ある研修会はなかなかありません。zoomということで、交通費がかからなかったこともよかったです。
これからも「こども発達支援研究会」は研修会を開催されるそうです。オンラインで受講可能なようなので、興味のある方におすすめです!