教師になり、教育書だけでかれこれ千冊は読んできました。その中から、若い人でも読みやすく、それでいてすぐに役に立つ、価値が高い本を選びました。小難しい本、重厚な本は避けました。腰を据えて読む本は教師人生が楽しくなってきてからでもいいかな、と思います。
このようなキャッチーなタイトルの日記もどうなのかと感じます。ただそもそも、このブログを始めたきっかけは、自分の学級崩壊でした。新しく教師の道を歩まれる方が、少しでも私の失敗を笑い、踏み台にして素敵な幸せな教師人生の第一歩を踏み出してほしい。そんな願いを込めて、このブログを開設しました。
とまれ、ぜひ読んでみてください!
①若い教師の成功術「ちょっと先輩」からアドバイス(大前暁政)
私の学級経営の始まりは、大前先生と次に紹介する野中先生の本でした。「ちょっと先輩」の名前の通り、大上段に構えた文章ではありません。指示をするときに気を付けること、特別支援を要する子供を担任した時にどうすればいいのかなど、日常の些細なエピソードをまじえながら、分かりやすく解説してくれます。特に印象に残っているのは次の一節。
「最初はたった1つのルールを守らせる」
大前先生は「授業に遅れて来ない」ことにしました。教師はあれもこれもルールを設定しがちです。しかしそれだと全てを守らせるのは難しくなります。皿回しと一緒ですね。いくつもお皿を回すことは難しいのです。だから1点に絞る。
大前先生の本には外れがないといつも思います。私の一番のお気に入りは『子どもを自立へ導く学級経営ピラミッド』。毎年1回は読んでいます。『若い教師の成功術~』よりも少し難しめの本ですので、キャリアを多少積まれてからのほうがいいかもしれません。
②新卒教師時代を生き抜く心得術60-やんちゃを味方にする日々の戦略(野中信行)
横浜市で初任研指導をされていた先生が送る実践本。『新卒教師時代を生き抜く~』はこの本にもいくつかありますが、これが一番読みやすいかと思われます。気に入れば他の本にも手を伸ばしてみてください。この本の良さは60の項目ごと、気になるところから読み進めていけるところです。「勤務校に行くときの準備物は?」や「子供が納得する学級目標の決め方は?」など、大切なことなのだけれど、あまり教えてもらう機会がないことについて細かく書かれています。
どの本でも野中先生のおっしゃることは非常に明快です。授業も大切だが、まずは学級経営。そのためには最初の3日、7日、30日間が大事だと。その際に気を付けるべきは教師と子供の間に縦糸をしっかりと張ることだ…と(詳しくは北海道の横藤先生が提唱された「織物モデル」を検索)。野中先生の講演は何度も聞き、そのたびに首肯するばかりです。新卒から数年、今も手元に残している大切な本です。
③担任ビギナーズ 365日の仕事術 小学〇年生になったら 学級づくり授業づくり
365日シリーズとでも言いましょうか。本書以外にも、該当学年の指導について網羅的に書かれた本がいくつも出版されています。それらのいくつかを持っていますが、この「担任ビギナーズ」シリーズが最良だと思います。
私は毎年、担当学年が分かったら、この本を買っていました。この本にはその学年の主な学習内容について、授業プラン付きで載っています。学級開きからクラスが軌道に乗るまでの流れも詳しく分かりやすく書かれています。賛否両論ありますが、TOSSの先生方の指導法は、若い先生たちにとって非常に大きな武器になると思います。なお、日本標準から出ている「明日からできる速攻マンガ 〇年生の学級づくり」もおすすめです。マンガですので、すらすらと読めます。それでいて中身は熱い(厚い)。こちらも良書です。
④このユーモアでクラスが変わる 教師のすごい!指導術(森川正樹)
森川先生の本も、読むたびにドッグイヤーばかりになります。森川正樹先生と言えば「書く」ことで大変有名な先生です。すらすら読める点も◎
この本を読んで、すぐに私がやったこと。それはamazonでパペットを買ったこと!笑(パペットを紹介するページがあるのです)サルとペンギンのパペットが私の教室にはいます。中学年ぐらいの子供たちには大人気です。
こちらの本の一番気に入っているのは次の文。
「プロ意識は『表情』に表れる」
関西人らしく、笑いを大切にされた先生で、本書でも随所にその要素が見られますが、指導の要もきちんと書かれていることを示唆する一文です。森川先生の『できる先生が実はやっている 学級づくり77の習慣』(明治図書)もおすすめです。
⑤授業力&学級経営力(明治図書編集部)
本というより雑誌ですね。学級経営を学ぶ上では外せない1冊です。特に毎年4月号は学級開きの特集をしており、永久保存版にしています。教育界にも数多くの雑誌はありますが、「授業力&学級経営力」が最も万人が受け入れられる雑誌だと思います。雑誌の良さは大勢の先生方の記事が集まっているところです。学級開き一つとっても、その教育観の違いから、指導はまるで違います。多くの記事を読む中で、若い先生ならば、まずはこれはいいな!と思った指導をつまみ食いで始めてはいかがでしょうか。(邪道という人もいそうですが)
⑥新任3年目までに必ず身に付けたい! 子どもがパッと動く統率のわざ68(西野宏明)
「教えたことが子どもに定着するのは、評価するからです」
「笑顔は『心のポケット』を広げる」
「教師の『まあ、そんなに型苦しくしないでいいか』という気の緩みが『話を聞かないクラスをつくる』ということを肝に銘じよう」
などなど、いくつもの金言が書かれています。
褒め方についての記述も秀逸です。私が即まねをしたのは教師が発見した良いところを、子供に考えさせて言わせるという方法。子供は褒められることが分かっている+いいところを見つけようとする。一気にクラスがあたたかくなって、おすすめですよ。
⑦いじめの構造を破壊する法則(向山洋一)(かつての書名は『いじめの構造を破壊せよ』)
『教師修業十年』『子どもを動かす法則』『学級を組織する法則』『向山流 子供とのつきあい方』かで迷いましたが、昨今、話題にあがる「いじめ」に真正面から切り込んだ本作を推します。
本書のメッセージは次につきます。
「いじめをなくせるのは教師だけ」
しかしこれだけニュースを騒がせているように、いじめの撲滅は難しい。どうすればいじめは防げるのか。その秘訣を氏はまず「差別を見逃さないこと」と言います。
具体的な場面として、本書では隣の子の机を少し離そうとする場面を例に挙げます。よくある光景です。しかしその一瞬にどう対応するか。いじめの構造を破壊できるかどうかは、その一瞬にかかっているのだと思います。グループ分けで「好きな人同士がいい!」というアイデアにどう対処するかという項も必読です。
⑧学級経営10の原理・100の原則(堀裕嗣)
私が本書で最も心に刻んだのは次の一節です。
「具体的な作業をしっかり教えようとする担任は多くいます。しかし、定着しているかどうかまで確認しようとする担任は滅多にいません。」
教師はとかく「教える」ことに躍起になり、その「定着の見届け」には甘くなりがちです。これは対子供だけではなく、私の場合、校務分掌でもよく起こすミスです。あと一歩の詰めをすればよかったのに!と思うことはしょっちゅうです(とほほ)。堀氏はこの定着のことを「定着確認の原理」と呼びます。これは「一人も置いていかない原理」だとも言っています。詰めを徹底することは、ともすると厳しい先生に見られがちですが、実際はその反対。どの子も見捨てないという優しさあふれる原理なのです。
⑨AさせたいならBと言え(岩下修)
「もっとしっかり洗いなさい」
「もっと早く洗いなさい」
これらの指示はAさせたいときにAと言う指示である。これではだめだと岩下氏は言う。
では何と言うか。
「お鍋をゴシゴシ洗う音が、ここまで聞こえてくるように洗ってごらん」
見事である。今年度、支援学級を担任してみて、改めてこの「AさせたいならBと指示する」大切さを知った。直接的に言っても、支援学級に所属している彼ら彼女らには通用しなかった。「しっかり読みなさい」ではなく、「口を開けたとき、指がたてに2本入る大きさで読みなさい」。「静かにしましょう」ではなく、「隣の教室の音が聞こえるかな」というように、私は言った。
無論、氏の本に書かれてある事例のような鋭さではない。だが、私程度でもいくつかは考えられる。それは、この本の中に「B」を生み出す原理が書かれているからだ。なるほどと膝を打つこと間違いなしである。
⑩まんがで知る教師の学び(前田康裕)
主人公は教師6年目の女性教師。彼女のもとにベテランの男性教師がやってきます。彼女はベテランの先生のもとで授業の技術だけでなく、そもそもの本質である「学ぶとはどういうことか」を考えたり、授業観を磨いていったりします。ビジネス書の内容を絡ませながら、教師がどのように学んでいけばいいのかを各自が考えることができる本です。ネタを学ぶ、技術を知る。教師の学びはそれで終わりではないのだと感じさせてくれる本です。なお、続刊もあり、私は第2巻が特にお気に入りです。
・・・
以上の10冊は人によれば、ハウツー本に見られるかもしれません。テクニック・ハウツー本を批判することを私は否定しません。本来、ハウツー本の背景にある著者の思想をこそ学ぶべきだからです。
しかし、若い先生が何を求めているかというと、かつての私がそうだったように、まずは明日役立つ知識・技術なのです。時間にゆとりがある今、それらをたくさん知っておくことで、だいぶゆとりを持って子供に向き合えます。小難しい理論や理念は、走り始めてしばらくして、ふと立ち止まったときに手に取ればいいと思うのです。まずは教師人生を楽しむこと! そのためにおすすめできる本を選びました。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。