小学校教師クラメロンの日常

関西のみかんが有名な県に住んでいます。小学校教員。3.5.2.6.5異動1.4.特別支援学級.5.1という流れ。今年も生徒指導主任。

緒川小学校参観記

東浦町立緒川小学校の学校視察に行ってきました。

 

緒川小学校と言えば、単元内自由進度学習を半世紀前からやっている学校として、最近多くの注目を集めています。

 

緒川小学校のカリキュラムは独特です。その中の1つが「週間プログラム」で、いわゆる「単元内自由進度学習」です。1年生は1教科ですが、2年生以上は2教科の特定の単元を約90分間、自由進度で学ぶプログラムです。例えば国語の「こまを楽しむ」と理科の「風とゴムのはたらき」を90分間で学びます。それを約2週間続けます。

 

週間プログラム、略して「週プロ」は学期に1回設定されています。つまり1年間で3回(計6週間)ほど行います。1日2単位時間ですから、単純に考えると60単位時間を使います。とはいえ、1週間の中で、週プロをしない日もあるので、実際はもう少し少ない時数だと思います。

 

子供たちは教師から配られた大量のプリントを解いていきます。プリントは指示書と言ってもよいかもしれません。算数の「かさ」の授業ならば、水を別の容器に入れ替えて調べていました。

 

ときどき教師によるチェックが入ります。

 

イメージがしにくい方は、ネットで調べてみると良いでしょう。動画もいくつもあります。

 

さて、今回視察をしてみての私の感想。

 

「確かに子供たちはよく頑張っているし、楽しそう。しかし学力の定着は厳しいだろう。そして、教員の負担が半端ない。だから近隣の学校に広まらないのだろう。」

 

1~2割の子供は、週プロ中も机にぐでーっとしていたり、学校内を出歩いていたり、友達とぺちゃくちゃおしゃべりしています。まあ、そりゃあそうでしょう。どこで誰と学習をしても良いのであれば、適当な時間を過ごす子が出てくるのは織り込み済み。そういった子に、特に厳しい指導をしないのも緒川小学校の特徴でした。この1~2割を多いと見るかどうかですが、仮に私がいる学校で同様のことをしたとしたら、3~5割は学習から逃避するでしょう。

 

子供たちに聞くと、結構生き生きと週プロの良さを語ってくれました。楽しそうではあるのです。

 

しかし学力の定着という点からいうと、極めて厳しいでしょうね。

プリント学習と言っても、教科書の文言をただ書き写している場合もありました。教師のチェックシステムも機能しているとは思えませんでした。何より教師を待つ列の長いことといったら。この週プロで「思考判断表現」が身に着くとは思えませんでした。いや「知識や技能」も怪しい。唯一、チェックできるとしたら「学びに向かう態度」でしょうか。

 

何より驚いたのは、週プロに対する準備の多さです。大量のプリントをまず自作。加えて、オープンスペースには、授業のために教師が作った資料がとてもたくさん並べられていました。動画を用意していた学年もありました。

 

いったい毎日何時に学校を出るのだろう。そう思いました。緒川小学校の先生方には尊敬の念しか覚えません。

 

東浦町立なのですから、当然人事異動があります。東浦町内を転々とする先生もいるはずです。しかし東浦町=自由進度学習とは言われず、あくまでも緒川小学校=自由進度学習になっているのはなぜか。それは、異動した先生方が、緒川小学校のやり方を広めていないからでしょう。なぜ広めないかと言えば、オープンスペースがない・支援員が少ない…などのハード面の欠如もさることながら、かなりの激務を要求されるからだと推察します。

 

緒川小学校のスタイルは確かに価値があると思います。しかしいくら「個別最適な学び」と国が言い続けても、さすがにこのやり方では現実的に無理があるだろうというのが私の感想です。