実は夏休み前に、本校で結構ひどい、いじめが発生しました。
6年生の男子に対して、複数人がキモイだの、死ねだの、○○菌だの、人格を否定する言葉を投げつけていたそうです。
事件発覚後、すぐに校内いじめ対策委員会を実施し、指導の手順を確認しました。
結局、なんとか事件はおさまり、夏休み明け現在、被害者は楽しく学校に通えています。
ただ、私がその事件で感じた最大の闇は、クラスのほぼ全員がそのいじめを知っていたことです。傍観者が多数いたわけです。傍観者の誰もいじめを止めず、教師にも言わなかったことこそ、本事案の最大の問題点だと思います。
傍観者は言います。
「自分が代わりにいじめられると思った。」
「いじめられるのはかわいそうだけれど、いじめる方も問題があって…」
「僕は直接やっているわけではないのに、なんで叱られるの?」
昨今、いじめは社会問題になっています。メディアで触れることも多いでしょうが、この状況です。
では、学校に、教師に何ができるのでしょうか?
よくあるのは、いじめアンケートです。月に1回ずつ行えば、それなりに見えてくるものもあるでしょう。しかし本校でも当然実施しており、それでも見抜けなかったので、効果はそこまで…かもしれません。
文科省も注目しているのは、「学級風土」です。いじめ問題についての研修もしているそうで、効果がありそうですが、費用がどうなのでしょうか。
学級担任として、もっと手軽にできる方法はないのでしょうか?
私が考えるのは、子供同士が日々の小さな「見て見ぬふり」を見逃さないことです。
例えば、授業のチャイムが鳴っても、席に着かない子がいたとしましょう。その子に学級の友達はどうするのか。
席に着かなくてもだれも困らないのだから何も言わない? 確かに、私もかつて、「人の迷惑にならなければ、放っておけばよい」という考えでした。しかし今は違います。あらかじめ学級全体に「席に着かない子がいたら、教えてあげてね。シンプルに優しく言えばいいよ」と伝えておくのです。
ルールからはみ出ている子がいたら、子供同士が正せば良いと思います。
怖いのは、子供間で上下関係が生まれることです。ですから、あくまで子供同士の注意や声掛けは「シンプルに優しく教えること」です。ここを徹底しないと、「○○君!早く席に着いて!」と大声で言う子があらわれます。クラスの雰囲気も悪くなってしまいます。
もしも放っておいたらどうなるでしょうか?
「ルールを無視する子がいても、自分に関係がなければ黙っているのが良い」という誤ったメッセージを子供に植え付けてしまいます。
ですから、日々の小さな綻びを子供同士が見て見ぬふりをしないことが、いじめの傍観者を生まないことにつながると思います。
あるいは「スパイを大事にする」もいいですね。
中村健一先生が、「ブラック生徒指導」でお書きになっています。
簡単に言えば、「先生、○○さんが△△さんのことをバカって言っているよ。」という密告者を粗末にしないということです。詳しくはブラック本に譲りますが、子供の情報が結構伝わってくる良い手です。
もちろん、傍観者もいじめに加担していることや、いじめの構造、何がいじめなのか、いじめはそもそも犯罪であることなどなど、様々な点を子供に伝えていくことも大切です。