小学校教師クラメロンの日常

関西のみかんが有名な県に住んでいます。小学校教員。3.5.2.6.5異動1.4.特別支援学級.5.1という流れ。今年も生徒指導主任。

特別支援学級担任は学校のエースがするべき

数日前、次のニュースが流れました。

news.yahoo.co.jp

記事では、新規採用10年目までの教員が、特別支援学級の担任等を2年以上経験するのが望ましいと言われています。その理由として、特別支援学級在籍の児童生徒が急増しているのに、教員の育成が進んでいないからというもの。

 

私はこの制度には反対です。

 

理由を教員の視点から、そして児童保護者の視点から述べます。

 

自分は採用4年目に特別支援学級の担任になりました。その経験は確かに今(通常学級担任)に生きています。ですが、失ったものも大きかったように思います。

 

そもそも学校現場の人たちは、通常学級の担任になりたくて教師になったはず。だから教員希望の大学生で、特別支援学級の担任になることを想定している人は多くないし、キャリアのほとんどが特別支援学級の担任…なんて全くといっていいほど考えていないでしょう。若手の教員にしても、数年間、特別支援学級の担任をしていても、いずれは通常学級の担任に戻りたいor戻る予定という人が大半でしょう。

 

そう考えたとき、次の点は大きな意味をもちます。それは「通常学級の担任に求められるスキルと特別支援学級の担任に求められるスキルは全く異なる」ということ。

 

通常学級の担任は30人~40人の子供たちをまとめあげる「統率力」が必要不可欠です。この力がない人は、あっという間に学級崩壊します。もちろん一人一人とつながる力、いってみれば横糸をつむぐ力も大事なのですが、正直言ってこちらは通常学級の担任をしながらでもある程度は身につきます。これまでの優れた先達たちは通常学級の担任しかやっていなくても、素晴らしい個別対応をしてきたわけですから。

 

一方で特別支援学級は多くて8人。全体をまとめあげるのではなく、それぞれの発達の特性に応じて手立てを変えるという「個への対応力」が求められます。

 

どちらも大事です。どちらも奥は深いです。しかし若いうちに身に付けるべきなのは、間違いなく「統率力」、つまり全体をまとめあげる力の方です。なぜなら、「個への対応力」がいささか問題ありでも、崩壊まではいかないからです。だから、いわゆる「崩壊させがちな先生」は特別支援学級の担任になるケースが多いのです。例えるならば、通常学級の担任をするならば、「統率力」はそれがないと生きていけないというスキルで、「個への対応力」はもっているとより一層素晴らしいよというスキルです。

 

ここで大事なのが「通常学級の担任をするならば」という点です。

 

多くの教員は特別支援学級の担任をしたとしても2年間程度で元に戻る、つまり通常学級の担任になることを考えます。そのときに「個への対応力」がある程度身についた一方で、「統率力」が数年間で失われたとしたら? 結構しんどいことになりませんかね?

 

とりわけ採用後最初の10年間は貴重です。ここで徹底的に「統率力」を磨いたのち、「個への対応力」を高めるために特別支援学級の担任をするなら分かります。しかし、「統率力」を中途半端に学んだ人を特別支援学級の担任に据えると、何もかも中途半端な人を育てることにつながりかねません。

 

これが教師側から見た反対理由です。

 

今度は児童保護者側から考えてみましょう。

 

これは簡単です。教員の育成のために、大事な子供保護者の教育を犠牲にするなと。

以上終了です。

 

ですので私は制度案とは逆に、特別支援学級の担任は学校のエース教師がなるべきだと言いたいです。

 

通常学級でエースだった教師は、必ず個への対応力も優れています。でなければ、そこそこできる教師止まりです。エース級教師と準エース教師の違いは、30人以上子供がいる中でも、大変な子供への手立てが厚い(熱い)かどうかです。ゆえに、特別支援学級の担任を任せても優れた結果を出すでしょう。

 

問題は、そういったエース級を特別支援学級の担任に据えるだけの気概が校長にあるかどうかです。

 

私は常々思っているのですが、「特別支援学級はその学校の中心であるべき」です。支援学級に在籍する子供は、言ってみれば「弱者」です。その彼ら彼女らが大切にされる学校が悪い学校のはずがないでしょう。だから職員室の隣の教室が特別支援学級であったり、職員名簿の一番上に特別支援学級の担任が載っていたり、管理職が必ず毎日支援学級を覗いたりする学校は良い学校だと思います。そんな特別支援学級の担任に、その学校の顔を配置すれば、学校の職員の見方がまず変わります。さらに、日陰にされがちな特別支援学級の担任の発言が全体に影響を及ぼします。

 

ただ、そうすると、今度は通常学級が崩れる恐れがあります。エースがいなくなるわけですからね。ここで天秤にかけられるわけです。ほとんど全ての校長は、エース級教師を通常学級に据えるでしょう。なぜならば、多少特別支援学級が崩れても、学校全体に影響を与えることはないからです。逆に通常学級が1クラスでも崩れたら、結構大変なことになります。ここは多くの先生方がうなずくところだと思います。

 

かくして、いつまでたっても、特別支援学級は若手or通常学級をもてない先生の巣窟になるわけです。

 

であるならば、そもそも採用の枠を変えるべきだとも思います。

 

つまり、通常学級の担任を主にする採用枠と、特別支援学級の担任を主にする採用枠で分けるのです。

 

そうすれば、「なんで自分が特別支援学級なんだ!!」と怒り出す教員(ときどきいる)もいなくなりますし、特別支援学級に誇りをもって仕事に取り組む教員も増えるでしょう。時々、相互交流があっても良いでしょうが、基本は住み分けをするのです。

 

最後に。

既存のシステムで何とかしようとしたり、とりあえず「若手を育成」と言っておけばいいやぐらいの考えしか検討会議の面々は思っていないのでしょう。現場の苛烈さをあまり考えてないなと思います。