小学校教師クラメロンの日常

関西のみかんが有名な県に住んでいます。小学校教員。3.5.2.6.5異動1.4.特別支援学級.5.1という流れ。今年も生徒指導主任。

特別支援を要する子はなぜ増えているのか?

文科省の調査によると、通常学級で特別な教育的支援を要する児童生徒の割合が8.8%いるそうです。令和4年の調査結果です。

 

前回の約10年前の調査では6.5%でした。この結果からみると、特別な支援を要する子供は増加していると言えます。ただ、これらの調査は教員のみを対象にしたものです。本当に全てがイコール支援を要する子かどうかは分かりません。

 

ただ、現場の人間としても「特別支援を要する子供は増えている」が実感です。

 

次に気になるのは「なぜ増えているのか?」です。

 

今回の記事では、私が考える「特別支援を要する子がなぜ増えているのか?」の答えを記します。

 

①社会的な認知の広がり

 

 最もよく言われることです。

 

 例えば発達障害という言葉をかつてよりも耳にすることが増えました。様々なメディアが特集を組んでいることが影響を与えていると思います。すると、「ひょっとしてうちの子も…?」と保護者が考えるきっかけになります。

 

 教員の世界でも同様です。

 

 特別支援教育という言葉を聞かないまま教壇に立つ教員は、今や皆無といっていいでしょう。研修会でも常にホットワードとして飛び交っています。

 

 言ってみれば、これまでよりも引っかかる網が広がったというわけです。

 

 同様のことは文科省の調査結果の中でも触れられています。

 

「教師や保護者の特別支援教育の関する理解が進み、今まで見過ごされてきた困難のある子供たちにより目を向けるようになったことが一つの理由として考えられる。」

(「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」より引用

https://www.mext.go.jp/content/20230524-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf

 

②家庭環境の変化

 

昭和は祖父母・両親・子供の三世代家庭が中心でした。

 

平成になると核家族化が進みましたが、父親が働き、母親は専業主婦というパターンが多かったように思います。しかし令和の今は共働き家庭は増えています。共働き家庭の増加については、厚生労働省が調査をしています。(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/20/backdata/1-1-3.html

 

このような家庭環境の変化は、子供にどんな影響を与えるのでしょうか?

 

 子供からしたら、関わってくれる大人の数が減ることは大きなインパクトです。投げ掛けられる言葉の数も減るでしょう。夫婦共働きということは、両親とも仕事で疲弊している可能性もあります。とすると子供を見る時間も体力も、かつてほど十分にはないかもしれません。そんな中で暮らしているわけですから、心の安定がない子供が増えるのも頷けます。安定しない=発達障害ではないでしょう。が、心が安定していないと、他の子に手を出すなど自己中心的な活動が増えてしまう恐れがあるでしょう。

 

 この「家庭環境の変化」は①の「社会的な認知の広がり」に匹敵する大きな影響力

をもっていると思います。

 

③高齢出産の増加

 

 高齢出産は増えているようです。不妊治療の保険適用も始まり(菅政権の功績の1つですね)、今後さらに高齢出産は進むことでしょう。

 

 が、高齢出産は子が染色体異常をもつ可能性が高まるようです。それがそのまま特別な支援を要する子供の増加につながるかと言われると、やはりイエスだろうと私は思います。

 

 この点については、かなりナイーブな問題ですので、あまり指摘する人がいません。しかし現場で働いていると、保護者が高齢の子供は大変な子が多い印象は受けます。特別支援学級の担任時、市内の支援学級の先生方と雑談をすると「支援学級の子の親御さんは年齢が高いことが多い」とよく述べていました。デリケートな問題なので、公的な場で話題になることはなく、あくまで雑談の中で出てくる話ですが。

 

 このように、「現場で働いている人にとっては常識だけれど、話題にすることはタブー視されていること」はわりとどの業界でもあることではないでしょうか。

 

 現場の人間からすると、高齢出産の増加は、特別な支援を要する子供の増加に一役買っていると思います。この点は高齢出産を手放しに礼賛するわけにはいかない理由のひとつです。

 

④学校の権力の低下

 

 かつて学校は子供を厳しく指導してきました。昭和の頃は体罰は当たり前。平成になり体罰こそ減りましたが子供を厳しく指導する傾向は続きました。それが令和になり、一気に変わったように思います。

 

 子供の人権を無視した一方的な叱責はもちろんダメです。しかし厳しい指導に対する社会や地域、保護者の目がかつてないほど激しくなってきた今、学校は子供を容易に叱ることができなくなっています。

 

 そうすると何が起こるのか。

 

 子供による授業中の離席や私語、他の子供への暴言や暴力行為などに対しても厳然と立ち向かえなくなるのです。

 

 学校はどうするのか。

 

 そこで頼りになるのが「特別支援」です。「ひょっとすると発達に何か特性があるのかもしれませんね。」と言って、保護者に子供の検査を促し、様々な外部機関(例えば医療機関)との連携を模索していくわけです。

 

 その結果、発達障害の診断が出る子も増えるでしょう。

 

 つまり、今までは教師の権力で押さえつけてきたものがなくなり、全て「特別支援」の対象として対応するようになったわけです。

 

⑤生活習慣の乱れ

 

 最近、「発達障害もどき」という言葉を聞くことが増えました。『「発達障害」と間違われる子どもたち』(成田奈緒子)を読むと、確かになーと頷くことが多くありました。「発達障害もどき」が増えた背景に、生活習慣の乱れがあるとされます。先の著者は、しっかりと早寝早起きをすることで「発達障害もどき」は改善されると言います。特に睡眠時間の確保が大事のようです。

 

 共働き家庭が増え、子供の就寝時刻が遅くなっていることは、看過できない問題と言えましょう。

 

他にも、デジタル機器(特にインターネットゲーム)との関係、食生活の乱れ、新型コロナウイルスの影響、体験活動の減少なども考えられます。

 

ただ、何か1つが原因というわけではなく、複合的なものだと思います。