小学校教師クラメロンの日常

関西のみかんが有名な県に住んでいます。小学校教員。3.5.2.6.5異動1.4.特別支援学級.5.1という流れ。今年も生徒指導主任。

特別支援学級と通常学級の学級経営の違い

特別支援学級シリーズ第3弾。

 

特別支援学級の担任をやって思ったことの1つに、

特別支援学級と通常学級では経営の仕方がまるで違うな」

ということがあります。

 

特別支援学級と通常学級の最大の違いはもちろん、数の違いです。30人前後の子供を相手にする通常学級と、多くて8人を相手にする特別支援学級(個別学級)では学級経営の考え方が根本から違います。特別支援学級の場合、集団に溶け込むことが難しいから、移ってきたという子供がいることが普通ですからね。

 

通常学級の場合、

①全体の統率

②個別の指導・支援

という流れで指導のステップが移り変わります。逆から行うと大変なことになります。

 

しかし特別支援学級の場合は、全体への統率もあるにはありますが、基本的には「個別の指導・支援」がほとんどです。当たり前と言えば当たり前なのですが。

 

つまり、違いは「全体の統率」の有無です。

 

特別支援学級の担任をして、自分が非常にしんどかったのは何か。それは

「集団の力を使えなかったこと」

です。

 

通常学級の場合は、勉強が苦手な子供も、やらざるをえない状況になります。なぜなら、自分を抜いた他の30人の子供がやっているからです。あるいは、「全員、立ちましょう」という指示一つとっても、他の30人が立っていたら、不注意が強いADHDの子供も周りを見て立つことができます。

 

ですが、特別支援学級ではそれができませんでした。

 

全体を統率する技量が求められる通常学級担任に対し、個別へのアプローチが徹底して求められるのが特別支援学級です。特別支援学級と通常学級の担任では求められる能力がまるで違いました。

 

通常学級の場合は、「全体、しかる後、個」という大原則がありますが、特別支援学級では、「個に始まり、個に終わる」ように思いました。無論、学級という組織はありますし、特別支援「学級」ですから集団としての力を高めることも大事なのですが、通常学級と比較したら、圧倒的に「個」の世界です。全体への統率をすることができず、学級崩壊に陥る若手は多くいますが、案外、私の場合は、全体を生かして個別の指導を行っていたのだなと思います。(このあたりは異論がありそうですが。)

 

さて、長い前置きでしたが、実はここからが本記事の私の主張です。

 

それは、「通常学級の担任の力と特別支援学級の担任の力は比例しないのではないか」ということです。換言すれば、「通常学級の担任としていくら素晴らしくとも、特別支援学級の担任として素晴らしい結果が出せるとは限らないし、その逆もまたしかり」ということです。

 

例えば、特別支援学級を長年経験すると、その方のことを特別支援教育スペシャリストという方がいらっしゃいますが、それは不正確だと思います。正しくは、「特別支援学級or学校における特別支援教育スペシャリスト」ではないでしょうか。言い換えれば、「通常学級における特別支援教育は全く別物」です。

 

特別支援学級の担任に求められる特別支援教育のスキルとは何か。例えば、一人一人に合った教材・教具を開発する力であったりします。教師の指示に従わない子供が何人もいても、一人一人にじっくりと向き合う姿勢であったりもします。あるいは教科書なしでも子供たちが夢中になれる単元を組み立てる教材構想力であったり、様々な用具を作る工作技術であったりします。まさに「はじめに子どもありき」の世界です。

 

しかし通常学級の担任に求められる特別支援教育のスキルとは何か。例えば、活動を中心に組み立てることで、ADHDの子供が活躍できるような学習を組み立てる授業技術であったりします。あくまで教科書の教材を基本としながら、それをどの子にも分かるようにアレンジする(UD化する)力であったりもします。あるいは集団へ次の活動の指示を出しながら、その子のところへ行き、個別への配慮をするようなマネジメント力であったりします。「集団の統率ありき」とでも言いましょうか、あるいは「カリキュラムありき」とでも言いましょうか。

 

様々な特別支援教育の専門雑誌を見ても、あまり通常学級に役立つことは載っていません。「障害児教育」も「特別支援教育の実践情報」も「月間発達教育」も全て特別支援学校or学級のための雑誌のように思います。通常学級における特別支援教育という観点がすっぽり抜け落ちており、この点は大きな問題だなといつも抱いています。(発達障害に関する知見を豊富に持ったプロには、ぜひとも通常学級における特別支援教育をもっと語ってほしいと思うのですが。)

 

これまで、特別支援学級の担任を何年も勤めていたベテラン教師が通常学級に移ったとき、学級崩壊をするというケースを何度も聞いたことがあります。その理由は特別支援学級と通常学級では、「求められる特別支援教育」が全然違うからだと考えます。

 

この点を意識しないと、大変なことになります。

 

なぜこのようなことを書いたのか。それは、前回の記事で、通常学級の担任はもっと特別支援学級の担任を経験した方がいいと書いたからです。逆に言えば、特別支援学級の担任は通常学級の担任に移るということになります。

 

この記事には、通常学級に移る時に上記のことに気を付けた方がいいですよ、という意味を込めたのです。通常学級の担任が特別支援学級の担任をしても、学級崩壊になったという話はあまり聞きませんが、その逆はよく聞きます。私自身、自戒の意味を込めて書きました。