小学校教師クラメロンの日常

関西のみかんが有名な県に住んでいます。小学校教員。3.5.2.6.5異動1.4.特別支援学級.5.1という流れ。今年も生徒指導主任。

「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」書評

知人に薦められた本。なかなか面白く読めました。

 

 

令和の若者の心理を解説した本です。端的に言うと、「いい子症候群」の若者となります。

 

著者は大学教授。大学にいるわけですから若者と触れ合う機会も多くなります。ただ、この本の良さは、著者の実体験に加え、いろいろな実験・研究結果を引用したエビデンスベースドの本になっているところです。説得力があるのは、そのためです。

 

本書で随所に出てくる「いい子症候群」とは、「素直で真面目」だが、「決して目立とうとせず、自分の意見は言おうとしない。質問の仕方を教わるまでは質問もしない。ルールには従う。競争は嫌い」(本書p22・23等)などの行動原則・心理的特徴を指すようです。

 

(言われてみればそうかもなあ)と30歳になった自分も思います。今年、去年と教育実習生をもったのですが、どちらもそんな感じだったような…。ただ、自分が大学生のときも言われていたように思います。

 

それに対して、著者は最近の若者が昔(10~20年前)以上に「いい子」になってきたと言います。例えば、若者の保守的安定志向が以前に比べて強まっていることを、数値を挙げて主張されています。

 

一方で、私の体験を述べるのならば、タイトルの「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」は、別に大学生に限ったことではないように思います。小学校高学年の(特に女子に対しては)担任をもたれた方々なら、結構当たり前のことではないでしょうか。

 

「えっ、叱るのは個別、褒めるのは全体の前じゃないの?」と思われるかもしれませんが、高学年(特に女子)を相手にするとき、褒めるのも、そっと行うのが原則です。授業後、廊下でたまたますれ違った子に、「さっきの授業のあの発言、良かったよ。」とさりげなく言うのです。「さりげなく」がポイントで、ねちねち言うとダメです。本書でも触れられていますが、今の若者は目立つのが嫌いだからです。廊下で教師と二人で会話なんて目立ちますからね。

 

ギクリとしたのは、本書の中盤で触れられている「いい子症候群がいつ発生するか?」の項目。皆さんはいつだと思います?

 

著者は「小学校高学年」と仰っています。教師の問いかけに元気よく発言をするのが減るのが、このあたりと…と言うのです。いや~、その通りですね。

 

となると、小学校高学年で「主体性」や「挑戦心」を磨き、「変に周りと同調しようとする意識」を薄められるかがカギになりそうなのですが、どうなのでしょうか。現場の人間からすると、「ごく自然に」子供たちは周りから目立とうとしなくなるんですよね。不思議な現象です。どうすりゃいいんだ、と高学年を受け持つたびに頭を抱えます。

 

本書の後半で、著者は想定する読者(若者を指導する年代)に、1つの提言をされています。小学校高学年の子供を受け持つ担任に対しても、それはきっと当てはまります。結局大人が変わらないと子供も(若者も)変わらないのです。1つの提言とは何か?はぜひ本書をお読みください。